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ドリームプレイングマシン
 ドリームプレイングマシンって知っているかい? 思い通りの夢を見る事が出来るっていう機械だよ。
 たしか町の商店街の裏の方で午後六時から午前十二時まで店をやってたんだ。店の名前は「夢を売る店」だったかな?笑うよな。平日は皆働かないといけないからな。働かないと警察につかまるものな。
 試しに行ってみたよ。話題作りの為にね。暇だったし。でも俺は今の生活にかなり満足していたから夢なんて本当にどうでも良くて。でも何となく気になって行ってみたんだな。
 店は地下にあったよ。何だか少しうさん臭くてドキドキしたね。何せ表にある看板も拾ってきたっぽい錆だらけの鉄板に赤いペンキで「夢を売る店」だったんだぜ。秘密基地に潜入するようなそんな感じがしたな。階段を降りる時はスリルを感じたね。そうして思った以上に汚いドアを開けてびっくりしたよ。凄い人だったんだ。狭くて古くて汚いコンクリートがむき出しの店内にぎっしり人がいるんだ。そうして皆幸せそうに眠っている。子供もいたかな。見つかったら大事だよな。親は刑務所だよな。そう、そして店内には椅子も何も無かったよ。店のまん中にごちゃごちゃと配線がある大きな機械が一台あるだけ。瞬間、引き返す事に決定したね。何だか無気味だものな。夢も糞も無いぜ。でも絶妙のタイミングで店員が声を掛けて来た。機械みたいな男の子だったな。実際機械だったんだけれども。
「一時間からです。代金はあなたの大事なモノを一つ」
 作り話みたいだろう?でも本当なんだぜ。ここまでうさん臭いとよし、試して見ようじゃあ無いかって気になったよ。その時持っていた大事なモノは写真だ。死んだ母親の。俺が万引きでへまをやって捕まったから死刑になったんだ。ア、前にも言ったっけ? いつも持ち歩いて居たんだよ。マザコンだな。ハハハ。それを渡すと店員は、
「じゃあ一時間ですね」
 とほざきやがった。大事なモノのランクによって時間が変わるらしいんだな。直接聞いた訳じゃあ無かったけれども。そうして適当な場所に座るように言われた。何せ凄い人だったから開いている場所を見つけるのが大変だったな。そいつは機械にコードをセットした。先に針がついていたんだよ。それをいきなり俺の頭に差し込んだ。ちょっと痛かったけれど血も出たけれど文句を言ってやろうと思ったけれどその後の記憶が無いからすぐに眠ってしまったらしい。始めに説明位してくれても良かったのに。全く持って不親切だよな。
 そうして俺は毎日通うようになったんだよ。夢の内容は教えない。とりあえず幸せな時間だった。ずっと夢を見ていたかった。と、言うよりも現実の方が夢なんじゃあ無いかと思えるようになった。多分そう。今まで夢を見ていたんだよ。今も夢を見ている。悪夢だな。母さんは死んでいないし。夢で殺してしまうだなんて俺は母さんを恨んでいるのか? そう言うと母さんは笑ったけれど。
 大体俺と別れるだなんて嘘だろう。今まで上手くやって来たじゃあ無いか。俺は今でもお前を好きだし。ずっとこれからも気持ちは変わらないよ。断言出来る。確かに俺達の関係が誰かにバレたら確実に死刑になるけれど俺は別にかまわない。どうしても駄目なのか?

 小型化に成功した。店は摘発されて閉鎖されてしまった。廃人が何人も出たから仕方無い話なのだけれど。警察には金を渡して何とかやり過ごした。いつもの事だ。そしてこの研究もそろそろどうでも良くなって来た。そこに彼がやって来た。腐乱した死体と一緒に。そうしてこれが自分にとって最高の一番大切なモノだ。と言ったから彼の頭の中に機械を埋め込んでやった。レントゲンに映らないように工夫して。これで彼は只の植物人間。幸せな夢を見続ける植物。何だか美しいと思わないか?
 大事なモノが機械のエネルギーになる。そういう風に作った。何だか夢があるだろう。彼は一人の人間の一生分位の時間夢を見る事が出来るようにしておいた。死体を分解してエネルギーに変えるのは手間だったけれど約束は約束だ。今頃病院で幸せに眠っている事だろう。なるべくそうあって欲しいね。
 さぁ、次は何を作ろうか。
トラベルミン