|
力と破壊が支配する悪名高き都市国家サドム。獣王と呼ばれる王が支配するサドムでは、毎年12月にサクリファイスと呼ばれる武闘大会が開催されていた。
サクリファイスの試合において規則はなく、どちらか一方が負けを認めるか死亡するまで争いは続く。だが戦闘終了後に適用される唯一のルールがあった。それは試合に負けた者の身柄が、1年間、勝者に委ねられる事だ。
敗者の抵抗は許されず、禁を破った者は逃げのびようとも必ず処刑されるという。敗者は勝者の恩情に望みを託し、解放を望むしかない。だが、対戦後、監禁、拷問されて殺される者が多々いるという。
だが、サクリファイスに参戦する男達は後を絶たない。試合で優勝した者には現獣王と戦う権利が与えられ、獣王を倒せば新獣王として翌1年、サドム国の王座に座ることが許されるからであった。
獣王になるという事は、神の存在に近い、強大な力によって君臨することを意味する。獣王にはサドムを加護する神より、人智を超える力が与えられるのだ。
それ故、例え在位期間が1年しか保証されていなくとも、大いなる野望、夢を持った男達の心を捉え、離すことがない。
しかし、この999年間の長きに渡り、現獣王マーダルが王として君臨し続けている。冨と名声を求める戦士達の欲望と血を吸った、“獣王”という王座に君臨して……
マーダルが王として就任したのは遥か昔。獣王就任当時のマーダルを知る者は既にこの世には無い。そして、サクリファイスのラストバトルが非公開であることもあり、獣王マーダルの姿は謎に包まれていた。
999年間生き続けているマーダル。ある者は悪魔に魂を売った人間といい、ある者は姿亡き亡霊と言った。全世界で恐れられている、絶対的な力の持ち主マーダル、その姿を見た者はサクリファイス優勝者のみ。
だが、マーダルと対峙した戦士はラストバトル後……みな、行方知れずとなっていた。
そんな男達の野望が漆黒の雲のように渦巻くサドムに、1人の若者が足を踏み入れた。若者の名はジェス・アーウィン。ジェスは10年前に失踪した唯一の肉親である兄を探し、放浪の旅を続けていた。
そしてついに、10年前のサクリファイス決勝戦で兄セロスと戦ったという人物から、セロスがマーダルの居城に身柄を拘束されているらしいという情報を得た。
見えぬ壮大な力と漆黒のベールに包まれたマーダルに近付く為には、サクリファイスで優勝するしか方法がない。ジェスは兄セロスを探す為、サクリファイスに参戦するためサドムに入国したのだった。
|